夜明け前と夜明け後

5月の土曜に中山道の妻籠と馬篭にいく日帰りバスツアーを予約をしました。島崎藤村の「夜明け前」2巻4冊を昨年読んだので、いつか行ってみたいと思っていたからです。

夜明けとは、徳川幕府から明治新政府への政権交代を指すのではないかと思って読み始めたのですが、読んでみると、そうではなくて、鎖国からの開国と文明開化を指しているのだと分かってきました。

島崎藤村は、外国での生活経験も経た上で、国学に傾倒しながら維新には参加せず、精神的にも経済的にも不遇な晩年を送った父の生涯を、その時代とその思想との関連において理解してみようとしたのだと思います。

夜が明ける前の江戸時代末期は、誰でも知っている歴史なので、第1巻は一気に面白く読ませます。しかし、個人として不遇となった晩年を描いた第2巻は、国学や神道に関する記述が非常に多く、その基礎知識に欠けるので理解し読み切るのにはかなり時間を要しました。それでも、島崎藤村個人にとって本当に重要だったのは、やはり第2巻だったということは想像できます。

夜明け前は尊王攘夷のスローガンを利用して倒幕(政権交代)を実現しましたが、権力を得た者たちは国学を本当に信奉していたわけではなく、夜が明けてしまうと一気に洋学への傾倒が強まって、尊王攘夷の思想的背景であった国学や神道はむしろ排除されていきました。純真な国学信奉者であった島崎藤村の父の失意と精神的混乱は、そこから生じていきました。

社会が黒船のような大きな危機に直面すると、いかに強固だった政権であっても政権交代がおこりやすくなります。しかし、政権交代は、単に、支配し利権を占有する人たちの交代にすぎないのであって、その交代によって社会が良い方向に変わることが保証されるわけではありません。

日本は、実質的に自民党の一党支配が永遠であるかのように続き、今から20年くらい前までは著しい経済成長が長い間続きました。しかし、1990年初頭を境に、その後の20年間は経済的な停滞がずっと続いています。その上、以前から警告されていた少子高齢・人口減少の社会に突入したことによって、その危機は著しく大きくなってしまっているように思われます。

政権交代はありましたが、夜明けが本当に来る気配は全く感じられないので、交代した新しい政権に対するいら立ちが非常に募っています。夜明けは、政権交代を意味するものではなく、またそれだけによって実現されるものではありません。

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