米国はエネルギー純輸出国にはならない

米国エネルギー情報局(U.S. Energy Information Administration :EIA)は、毎年年次エネルギー見通し(Annual Energy Outlook)を公表しています。2014年版のアーリーリポートが2013年12月に、フルリポートは2014年4月にリリースされています(原データへのリンク)。2014年版では二酸化炭素排出量も含めて2040年までの見通しが出されていますが、以下では2025までのエネルギー供給見通しについて整理してみます。

最初に、エネルギー総供給量の見通しをグラフにしました。単位は「千兆英国熱量単位(quadrillion Btu)」という想像しがたいものになっていますが、異なるエネルギーを同じ指標で比較するための単位と理解できます。2013年までは実績になるので赤色の背景にしてあり、2014年以降は見通しなので背景色はなしにしてあります(以下の他のグラフも同じ)。
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さて、上のグラフで最初に注目されるのは、米国の「ネットエネルギー輸入(輸入−輸出)」は、減少はするものの2025年までになくなることはないという見通しになっていることです。タイトオイルシェールガスタイトガスなどの非在来型エネルギーの開発によって、米国がエネルギー純輸出国になるかもしれないという見解が出たりもしましたが、現時点で米国政府は米国がエネルギー純輸出国になることはないという見通しに立っているようです。

米国内のエネルギー生産構成をみると、石油と天然ガスのウエイトが高いのは当然として、石炭のウエイトも意外に高く、原子力のウエイトは意外に低く、バイオマスのウエイトがかなり高く、(太陽光や風力などの)その他の再生可能エネルギーのウエイトは低い、という印象を受けます。バイオマスは、米国の主要輸出品目である農産物の国際需給をタイトにして国際価格を高値支持することにも役立ちます。

米国のネットエネルギー純輸入は、石油と天然ガスの国内生産増加によって縮小してきていて、今後数年も縮小が続くという見通しが表明されています。そこで、石油と天然ガスの生産見通しをもう少し詳しくみてみることにします。まず、石油からみます。
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在来型油田である、米国本土陸上油田(Lower 48 Onshore)やアラスカの既存油田の原油生産量はこれまでもずっと減少を続けてきましたが、これからも少しずつ減少を続ける見通しにあります。他方、米国本土海底油田(Lower 48 Offshore)は当面生産回復が見込まれ、炭酸ガスを注入して圧力で古い油田の残った原油を絞り出す炭酸ガス注入増進回収法(Carbon Dioxide Enhanced Oil Recovery)による増産も僅かながら見込まれています。しかし、なんといっても大きな増産が見込まれるのはタイトオイルです。

タイトオイルがどういうものかは専門外なので、解説を引用させていただきます。『タイトオイルとは、孔隙率・浸透率が共に低い岩石から生産される中・軽質油(API比重32度以上 = 比重<0.865)を指す。シェールガス生産で使われる坑井仕上げ(水平掘りや水圧破砕法等)技術を応用でき、また2008年以降米国市場でガス価格が低迷しているのに対して原油の高価格が続いていることから、米国でタイトオイルの生産量が急増している。米国での埋蔵地域は、モンタナ州とノースダコタ州にまたがるBakken, Three Forks構造、テキサス州のEagle Ford構造が有名である。』(JX日鉱日石エネルギー「石油便覧」第4篇第2節2 非在来型石油資源 タイトオイル

タイトオイルは生産コストが高いので、増産に伴って(だけではないと考えられますが)2014年に原油価格が低下し始めると2016年にはタイトオイル生産は頭打ちするという見通しになっています。それでも、2016年には米国の原油生産のほぼ半分はタイトオイルが占める見通しです。

次に、(液化を除く)天然ガスをみてみます。
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天然ガスの種類についても専門外なので、解説を引用させていただきます。(日本ガス協会 世界の天然ガス市場 非在来型ガス

在来型ガス田の、本土その他ガス田の生産量は減少を続け、本土海底油田関連ガスも海底油田生産の回復に伴って増加してきたものの2014年くらいで頭打ちになり、本土海底油田非関連ガスも同様な見通しにあります。

他方、非在来型ガス田については、炭層メタンはすでに概ね生産量横ばいの見通しにあります。タイトガスシェールガスは生産コストが高いので、2016年頃から現在まで低迷が続いている天然ガス価格の回復に伴って生産量が増加していくという見通しになっています。2015年までは天然ガス生産量は横ばい推移を見通しており、日本が期待していたような大量の輸出などは考えにくい見通しとされています。

最後に、米国のエネルギー総生産量の中では小さいウエイトしか占めませんが、液化天然ガスの生産見通しをみてみることにします。日本が米国産天然ガスを輸入するためには液化して船で運搬する必要があるからです。
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液化天然ガスの生産は、米国本土陸上(Lower 48 Onshore)が太宗を占め、生産増加の太宗も占めています。しかし、非在来型天然ガスの増産見通しに比べて、液化天然ガスの増産は小さく、2021年まではほとんど横ばいに推移する見通しとされています。

こうして米国政府のエネルギー生産見通しを見てきた限りでは、米国はエネルギー純輸入国の立場から純輸出国に変わることはなく、外国に大量にエネルギー資源を輸出する余力は生れてこないので、日本が米国の液化天然ガスを大量に輸入できるようになるというシナリオはあまり考えられないと思われます。


 


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