PLCと分電盤

 PLC(電力線搬送通信)モデムに関するレポートにコメントをいただきました。ただ分電盤についての説明には素人なりにやや違和感を得ました。PLCは、もっぱら電波障害問題を巡って議論が盛んなようですが、そもそもPLC通信に物理的に使われる「電力線」そのものは、いったいどんな風になっているのでしょう。あわせて興味もわいたので少し調べてみました。

まず、コメントをいただいた方の言葉尻をとらえるようになってしまいますが、電気の世界では「相」と「線」は違うようです。「3相」は、波形の周期(位相)を120度ずつずらした3系統の交流電流を(当然3本以上の線で)送る方法で、主として工業用の動力(モーター)などに利用されるようです。これに対して、一般家庭の電気は、通常は「単相3線」で送られるようです。同じように線が3本でも、「3相3線」と「単相3線」は大きく違うのでややこしくなるわけです。

家庭用の「単相3線」は、それぞれ100Vの電圧がかかった2本の電圧線と、電圧のかからない中性線の(通常色の異なる)「3線」で構成され、電圧線と中性線の2本を接続して100V負荷に、また2本の電圧線を接続して200V負荷にすることができるようです。そういえば、以前、別に借りていたマンションでエアコンが故障して修理を依頼したときに、修理に来た業者はマニュアルに沿ってエアコンの基板の作動テストを何度も行い、どこも悪くないと言い張って帰ってしまいました。その後、私がふとしたことから分電盤を見たときに、コンセントへの配電が200Vになっているのに気づき、念のためエアコンの仕様を調べると100Vになっていたので、動かなくなったのはおそらく100V仕様のエアコンを200Vのコンセントから電源をとって動かしていたためと思われました。そこで、100Vのコンセントにつなぎなおすと、それ以降は問題なく動き続けました。今回、なるほど、100Vと200Vは、3線のどれをつなぐかによって決められるのか、ということがあらためて理解できました。

さて、それでは、その「分電盤」の方はどうなっているのでしょうか。電力会社の「電気を知る・学ぶ」というサイトに「分電盤」の説明がありました。分電は、領域分離とその外側もしくは内側への影響遮断を目的として行われるものですから、領域分離点に「遮断器(ブレーカー)」が設置されます。標準的な家庭用の「分電盤」は、「サービスブレーカー(SB)」、「漏電ブレーカー(漏電遮断器・EB・ELB)」、および「安全ブレーカー(配線用遮断器)」の3段階で領域分離と遮断を行っているようです。


私の理解では、「サービスブレーカー(SB)」は外側の電圧変動から遮断して内側を守る役割を、「漏電ブレーカー(漏電遮断器・EB・ELB)」は内側の漏電などによる契約容量を超過する過電流の影響を遮断して外側に波及させないという役割を負っているのではないかと思われます。最後に「安全ブレーカー(配線用遮断器)」は、100Vと200Vの領域(または機器)に分離して電気を供給するとともに、ある領域(または機器)の漏電や過大電力使用などによる過電流の影響を遮断して、他の領域(または機器)に波及させない役割を負っているのではないかと思われます。つまり、「漏電ブレーカー(漏電遮断器・EB・ELB)」だけしかきかないのでは不都合が多いからです。

私のマンションでは、たとえば、居間(リビング・ダイニング)で、トースターでパンを焼こうとした途端にブレーカーが落ちることがあります。しかし、その場合でも風呂やトイレも含めた家中の電灯が消えて大騒ぎになってしまうことはありません。電灯が落ちるのはトースターの周辺(リビング・ダイニング)だけです。それは「安全ブレーカー(配線用遮断器)」によって100V負荷配線もいくつかに領域分離されているからです。これは反面で、分離された領域個々の容量が小さくなるために容量不足でブレーカーが落ちやすくなっているともいえます。それは使用状況にあわせて領域ごとの容量を変更すればいいことですが、私はまだやっていません。

さて、本題のPLCの問題に戻ると、同じ100Vでも「安全ブレーカー(配線用遮断器)」で別の領域に分離されている場合、どの(どちらの色の)電圧線と中性線の2本を接続して100V負荷にしてあるかで、PLCの通信が可能かどうか決まるのではないかと思われます。もし、同じ100V のA領域とB領域でも、2本の電圧線うちの異なるもの(通常違う色の線)を使っている(左図の例では照明と冷蔵庫で分電=配線の遮断がしてある)と、おそらく通信は不可能になります。そして、複数の領域に100V負荷を分けて配線する(分電する)場合に、全ての領域が同じ側の(同じ色の)電圧線だけを使うように配線するのでしょうか、それとも2本の違う(違う色の)電圧線への分散を図るのでしょうか、あるいはあまり気にせず適当に選んで使うのでしょうか、素人考えでは、なんとなく2本に分散を図るのではないかと推定されます。

あくまでも素人の推定ですが、私のマンションの「分電盤」には10以上の「安全ブレーカー(配線用遮断器)」がついていて、100V電灯線もいくつかに領域分離(分電)されています。おそらく、居間のフルHDTVのコンセントと別室のVDSLモデムのコンセントの配線は「安全ブレーカー(配線用遮断器)」で分電=配線の遮断がされていて、かつ、100Vにするために選択されている電圧線が異なる(違う色の線が使われている)ため、PLC通信ができないものと思われます。

以上を整理すると、PLC通信は、技術的には、「安全ブレーカー(配線用遮断器)」や「サービスブレーカー(SB)」を超えて通信できる場合とできない場合があり、個々には実際にやってみなければ分からない、というのが正しいのではないかと思われます。また、(同じ家の中であっても)異なる電力供給契約の「サービスブレーカー(SB)」(すなわち異なる「分電盤」)を超えて通信することは、仮にやってみて実態上通信が可能であったとしても、法的規制上認められていないのでできない(やってはならない)、ということではないかと思われます。

コメント
コメントありがとうございます。
リンクを張っていただいている方がいるので、すでにこの「旧聞」に属するようなレポートにもまだかなりのアクセスをいただいております。
公式的な試験レポートを見ても、単相3線の違う側同士でも「減衰は大きいものの接続はできる」ようであることは当初から承知しておりす。
したがって、私のマンションで接続が出来なかったのには他の特殊な事情(電源に繋がっている家電の構成とか)が重なっていたのかもしれません。
いずれにしても、「一度やってみた」のでもうPLCアダプタ自体を手放してしまいました。少なくとも無理して使う必要はないからです。
  • 3rdworldman
  • 2006/12/25 10:49 AM
PLC使ってみましたけど、三線式の違う側同士でも通信できますよ。

パナの人曰く、中性線側に信号を流すから通信自体は大丈夫だけど、同じ側じゃないと信号が減衰するから速度が落ちるんだってさ。

#弱電の世界はワカランです。
  • ななし
  • 2006/12/24 1:45 AM
画像を無断使用した中部電力さん(なんでしょうね?)から丁寧なアドバイスを頂戴しました。心からお詫びとお礼を申し上げたいと思います。
我が家の契約は40Aになっています。
また、ブレーカーが落ちるのはアイロンをかけている脇でトースターを使おうとする(ともにテレビをみながらやろうとする)ためで、年に一度くらいついやってしまいます。同じ場所で20Aを超える電力を使用しようとする場合は、新たに配線する必要があるということですね。
いずれも使い方に気をつければいいことですので現状は変更しません。
PLCモデムももともと使う気はなかったので、郊外の1戸建てに住む友人に差し上げました。
  • 3rdworldman
  • 2006/12/12 11:02 AM
もう1点。
安全ブレーカーの役割は、ショートなどの過電流によって電線や電気機器等が加熱、焼損するのを防ぐためのものですから、通常は配線に許される最大容量(通常は20A)のものがついています。従って、安全ブレーカの容量を増やすことはできません。電流容量が必要な場合は、分電盤から分岐回路をもう1本引くことで増設します。(ただし、全体の容量は分電盤よりも電力会社側の電線の容量(通常は60A)を超えることはできません。)
  • WA
  • 2006/12/12 12:07 AM
http://www.chuden.co.jp/manabu/shikumi/bundenban/index.html
サービスブレーカーは、契約電流を超える電流が流れると電気が止まるものです。安全のためでもありますが、本来は電気契約の契約容量を超えないようにするためのものです。漏電遮断器は電線の絶縁不良などで漏電が起こったときに、主に感電事故を防ぐために電気を止めるものです。安全ブレーカーは、配線がショートしたりして過大な電流が流れて、発熱して火災が発生したりしないように(その系統の)電気を止めるためのものです。
これらの機器を越える時には信号の減衰があり、その度合いによってPLC機器の通信速度が落ちたり通信できなくなたりします。また、色の違う組み合わせの配線同士は直接繋がっていないので、PLCの速度が極端に遅くなったり通信できなくなったりします。
法律(省令)の規制上は、認定されたPLC機器を使うのにあたって、使用場所については屋内と規定されています。常識的に考えて、PLCアダプタの通信経路が屋外を通らないように同じ建物の中同士に設置すれば現在の規制はクリアしていると言えるでしょう。
分電盤の「安全ブレーカ」の接続を変えればPLCが通信できるようになる可能性は高いとは思いますが、その工事を行うには資格(電気工事士でしょうか?)なため、専門の業者に頼む必要があります。
  • WA
  • 2006/12/12 12:00 AM
言葉の定義ではなく、論理的もしくは実証的に間違いを指摘していただけないでしょうか?
それから仮に私の推論が正しいとしてもPLCは「使えないもの」ではないと思います。たとえば、分電盤内の「安全ブレーカー」の接続を直すなどができれば使えるようになるはずです。
  • 3rdworldman
  • 2006/12/11 10:21 PM
領域分離=分電ではないと思います。
単三で使用できないのであればほとんどの家庭で使用できないはずでは。
そのような商品では全く売りものにならないとい思いますが。
失礼がありましたらお許し下さい。
  • あなお
  • 2006/12/11 8:04 PM
自分のページで日本の家庭は単相3線式200Vと書いておきながら、コメントするときに間違えてしまいました。 ごめんなさい。
  • 野々村
  • 2006/12/11 5:36 PM
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