PLCの個人的総括

 PLCを巡っては、訴訟が開始されているようでもあり、ネット上でも、賛否両論の立場から、しばしばありがちな、いささか感情的な非難応酬合戦も目にします。

私の場合は、新しい領域のモノには興味を惹かれるので、いわば教養のために本を買うように、というよりは正直なところなんだか知らないが新しいおもちゃが出るようなので、つい予約注文してみただけで、もとよりいずれかの立場に組する者でもありません。

しかし、私個人にとって機能的に全く必要のないただのおもちゃを注文したら、後から実はそれが物議をかもしている問題機器であることが分かりました。物議をかもしている問題機器を、全く必要もないのに使うのは、反対する人たちにはきわめて悪意になってしまうのではないかと思われました。そこで、そこまで気遣いする必要はないかもしれませんが、必要はないので、どんなものかテストするだけで使用はやめようと思っていました。

ところが、実機を実際にテストしてみると、条件によってちゃんと機能したり機能しなかったりしました。機能しないと、どうしてだろうと原因を知りたくなります。どうしてなのか推論し、調べてみることはとても楽しく、むしろ機能しなかったことによってこの新しいおもちゃで少し遊び学ぶことができました。ですから、今はこれを買ったことに満足していますし、機能しなかったのだから金を返せなどとメーカーを攻め立てるつもりも全くありません。あまりにディレッタント(趣味的)に過ぎる歪んだ見解に思われるかもしれませんが、私の個人的価値観からすれば、所詮このような生活必需品でないものはみなおもちゃにすぎません。しかし、反面で、豊かな社会では、技術やビジネスにかかる人々の活動は、もっぱらおもちゃや嗜好品などの「生活必需品ではない領域」において激しく競い合いぶつかりあっています。

そこで、所詮は「独り言」に過ぎませんが、私自身の更なる満足のために、技術的ではない全く別の角度から考えを整理してみようと思います。この見解があたっているかどうか、正しいかどうかについて誰かと議論したいわけではありません。(念のため)

電力を供給している配線網を通信に使うことは技術的にはもともと可能ですが、「電力線に通信信号を注入した際に副次的に発生する電界・電波(『漏えい電界』)が既存の放送や通信と干渉する原因となる」ので、これまでは「規制」され、実態上広く利用はされてきませんでした。この規制を緩和して広く利用できるようにしてほしいという「要望」があり(あるいはありうることですがもしかしたら政府が誘導し)、政府としても経済を活性化するための規制緩和に積極的なことから、基本的に規制を緩和する方向で、「既存無線通信と高速PLCとの『共存条件』について検討する」ため、「漏えい電界低減技術に係わる実証試験」が開始されたものと理解されます。

そもそもこのような規制緩和を行う「必要」があるのかという論点と、経済活性化のための規制緩和を前提に「どの程度緩和」すべきかという論点とで、出発点のところで大きく食い違って全く噛み合いません。噛み合わないままにいわば議論打ち切りの形で「共存条件」がまとめられ、規制緩和が行われて、実際に民生用機器の発売にまで至りました。

これは、規制緩和によるビジネス領域の拡大と、それによってネガティヴな影響を受ける可能性のある既得権者の典型的な対立と理解することができます。まず規制緩和ありきで、緩和に反対する既得権者は「抵抗勢力」という風潮が基本にあります(少なくとも最近まではかなり優勢でした)。

確かに、実は新しい技術でもなんでもないが規制されていたためにこれまでできなかったことができる「新しい機器」が売り出されると、私のように、必要がないものでも買ってしまう人が出てきます。必要かどうかにかかわらず買ってもらえればそれでビジネスは(少しは)拡大し、規制緩和の所期の目的も何がしか実現します。他方、この規制緩和によってネガティヴな影響を受ける人たちの経済的損失がどのように出現するのかはなかなか算定が難しいと思われます。アマチュア無線や短波放送の権益被害にどの程度の経済的評価が下されうるでしょうか。このケースは訴訟に発展していますので、こうした利害バランスの議論も行われるかもしれません。

一消費者の意見としては、PLCのようなあまり必要性のない重要でないものより、消費者が扱いやすいインターフェースの標準化などの重要なことをぜひとも期待したいところです。パワーと通信ということでいえば、テレビとAV機器の周辺は、電力・画像・音声などの複数規格のケーブルと端子が無数に入り乱れて、めちゃくちゃになっています。実際、どの家庭でもそうではないかと思われます。D端子は画像だけで音声は別でしたが、HDMI端子は1本で両方扱えるのでこれが使えると少しケーブル数が少なくなりました。電力線に通信を重畳させるというようなことより、干渉を抑制しながら物理的にいろいろなケーブルをできるだけ束ねる、あるいはそういう規格の標準化を図るなどの素朴なことをもっときちんとやってもらいたいと思います。機器間ができれば1本かせいぜい2本のケーブルで全部つなげる(すなわち通信できる)ようにできないものでしょうか。こちらの方は、「必要」がはるかに高い問題だと思います。

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