電気工事とPLC

 電力線は当然電力会社の領域です。東京電力によるオフィスビル「実証試験」方法を見て、電力会社というより電気工事会社のビジネス戦略がなんとなく垣間見えてきました。

基本的に、PLCは、「ラストワンメートル(あるいはワンヤード)」、すなわち「通信ネットワークの終端」に対応する(だけに限定されて許可された)ものです。この「通信ネットワークの終端」は、これまでは、通信性能面でもセキュリティ性能面でも「有線のLANケーブル」が圧倒的に優位にあります。しかし、このところ「無線LAN」も通信性能とセキュリティ対応の両面でかなりキャッチアップしてきたように思われます。

有線LANの最大の問題点は、通信するためには新たに物理的にケーブルを引く「ネットワーク配線工事」が必要なことです。オフィスでは、全てのデスクにPCやプリンタが配置されるようになったので、床を這い回る通信ケーブルを収容するために、わざわざ床を二重構造の「フリーアクセスフロア」にするという設備投資も行われています。このため、古いビルなどで後から作った「フリーアクセスフロア」の段差に躓いてしまうといった問題がおきたりします。

仮に、オフィスのあるセクションが、人員増によりデスクの数を増やしたり、あるいはレイアウトを大きく変更しようとしたりすると、「電気配線工事」と「通信ネットワーク配線工事」の両方を行うことが必要になり、それぞれ別の工事資格をもった(通常別の)工事業者に工事を依頼することになります。仮に、通信ネットワークの終端を無線LANで行っている場合でも、(通常は)別の工事業者が来ることになるでしょう。

「通信ネットワークの終端」部分に「電力線通信(PLC)」を採用する場合は、当然、電気工事業者が電気配線工事と通信ネットワーク配線工事の両方を請け負うことになるでしょう。いままで二つの工事を二つの業者でやっていた手間とコストを考えると、非常に機動的で良いやり方に変わるように思えます。オフィスの通信ネットワークの終端に「電力線通信(PLC)」を採用するのは、相応のメリットがありそうな気がしてきます。既存のものをわざわざ変更して置き換えるほどの大きなメリットがあるとまでは思えませんが、新しいオフィスに電気配線工事と通信ネットワーク配線工事を設計する場合には、通信ネットワークの終端に「電力線通信(PLC)」を採用してフリーアクセスフロア設置を回避するというのは、有力な案になる可能性があります。

このように考えると、東京電力のオフィス「実証試験」が、東京電力系電気工事会社である関電工本社を使って行われたのは、なにがしか必然的なことのように思われます。

この「実証試験」でも、基幹部分は(おそらく通常光ケーブルの)既存のLANを使い、オフィスフロアの「通信ネットワークの終端部分のみ」に「電力線通信(PLC)」を利用しています。

この試験に使われた「AC/DCアダプター一体型(PLC)モデム」というのは、私には非常に魅力的に見えます。ノートPCを持っていってデスクのコンセントに「AC/DCアダプター一体型(PLC)モデム」をつなぐだけで仕事が始められるという夢のような利用シーンが思い浮かびます。(実際はセキュリティ上「セクション(あるいは特定領域)」を超えてどこでもつながるという「開放的なネットワーク領域設計」にはしないと思われますが・・・)

さて、同じような見地から一般家庭を考えてみると、家電製品の全てが通信ネットワークによって統合されるという「いわゆる」「ユビキタス」環境を実現しようとする場合、ポイントになるのはやはり電気配線工事と通信ネットワーク工事になります。その家庭の電気配線と通信ネットワークの「全体を最適に設計し設定するという作業」が絶対に不可欠になってきます。「電力線通信(PLC)」によって個人でも簡単にネットワークに接続できるというのは、終端の個々のネットワーク対応家電製品を作る側の単なる宣伝文句にしか過ぎません。個人では、家電製品の統合ネットワーク構築など到底不可能で、自分で実現できるはずはないものです。

個人が家庭でそんなことをやりたくなるのかどうか、個人的にはそもそもニーズの強さに大いに疑問がありますが、もし、家電製品の全てが通信ネットワークによって統合されるような環境を作りたいのであれば、間違いなく、専門の工事業者に相談して設計し工事してもらう必要があるでしょう。ネットワークの終端に電力線を使うかどうかはむしろ副次的課題で、もしその場合には「電波漏洩対策」や「セキュリティ対策」も含めて、統合的で最適なインフラの設計・施工が必要です。いずれにしても、家庭でも、電気配線工事と通信ネットワーク工事を別の業者に頼まなければならないというのはこれからかなり問題になってくる可能性があります。

技術的にPLCが無線より決定的に有利だとは(現時点では)思えませんが、オフィスでも家庭でも、電気配線と通信ネットワークの両方に同時に対応してくれる業者がいるのは間違いなく便利です。勿論、宅内工事は電話会社や電気工事会社のみに認められる資格ではありません。

それにしても、なんだか「AC/DCアダプター一体型(PLC)モデム」が欲しいなという気がしてきました。

コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

Livedoor BLOGOS 掲載記事一覧

無題.jpg

Twitter

selected entries

categories

recent comment

  • 米国のインバウンド・アウトバウンドから日本の状況を考えてみる
    3rdworldman
  • 米国のインバウンド・アウトバウンドから日本の状況を考えてみる
    3rdworldman
  • 米国のインバウンド・アウトバウンドから日本の状況を考えてみる
    寺前秀一
  • 日本に住む外国人の数と中味の変化を見てみる
    TPPsan
  • LNGと原油の月次輸入通関実績推移
    yyy
  • 訪日旅行者数(インバウンド)目標2000万人について考えてみる
    一般社団法人国際観光政策研究所
  • 健康寿命世界一
    3rdworldman
  • 健康寿命世界一
    丸山寛之
  • 大きく転換した米国の国際収支
    3rdworldman
  • 大きく転換した米国の国際収支
    3rdworldman

recent trackback

profile

書いた記事数:190 最後に更新した日:2017/01/16

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM