脳科学を知りたい

 今朝、忘れてはいけないと思って出しておいたはずのハンカチが見当たらず、あちこち探し回った挙句、本来あるべきポケットの中にちゃんと入っていました。ハンカチを出したことは憶えているのに、ついさっきちゃんとしまったことはまるで憶えていない、こんなことが少しずつ増えてきました。いや、こんなことは若い頃からもしばしばあったことで、それがとても気になってしまう年齢になっただけだと思いたい気持ちがあります。

吉成真由美さんという方の著書を、Amazonのユーズド商品に出ていた全5冊一度に注文してしまいました。これで全著作ということではないようですが、ユーズド商品なので5冊合わせても3,509円(半分以上は送料)でした。私にとって問題なのは、どうして吉成真由美さんの本を全部買おうと思ったのか、その「きっかけ」がどうしてもいくら考えても思い出せないことです。ところが、ハンカチを探して結局みつかったときの衝撃から、何故、吉成真由美さんの本に行き着いたかを思い出しました。まさに、人間(私)の脳は、どうしてこのように衰えていくのか、そしてどうすればこうした衰えの進行を抑制できるのか、ということのヒントになる本を探して、たまたまみつけたのでした。悲しいですね。

さて、その「きっかけ」はともかく、吉成真由美さんという方は、5冊の本の著者紹介をつなぎ合わせてみるだけで、著者の人物像にとても興味を惹かれてしまいます。

1953年生まれで、私の妻と同年、私とほぼ同世代です。津田塾大学英文科を卒業してKHKに入り、「おかあさんといっしょ」や「NHKスペシャル」などを担当したらしいのですが、その過程でコンピュータグラフィックにNHKの中でも先駆的に取り組むようになったようなのです。そして、コンピュータグラフィックのその先にある「科学への好奇心余って」、1985年(すなわち32歳のとき)に、NHKを退職し、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)に留学したというのです。履歴的に書けばそれだけですが、凄い行動エネルギーと適応能力があるものだとはなはだ感心させられます。

その上、1987年にノーベル生理学医学賞を受賞した分子生物学者、利根川進さんの奥さんであるということもいくつかの本にさらっと書いてあります。利根川さんはノーベル賞を受賞したときも米国マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授でした。「科学への好奇心余って」、MITに留学しただけでなく、ノーベル賞科学者の教授と結婚してしまったわけです。それも凄いことですね。

更に加えて、著者紹介に3人のお子さんのお母さんであることも書かれています。3人のお子さんの年齢から、吉成真由美さんが34歳から39歳のときに生んだお子さんだということになります。最近では、晩婚化・晩産化・高齢出産はごく普通のことですが、この時代にしかも3人出産されたのは、これもまた凄いと思います。ちなみに、最初のお子さんは利根川さんのノーベル賞受賞年に生まれたことになります。

5冊の著書のうち、4冊は、日本の雑誌に掲載されたものを後からまとめて編集して出版したものです。また、5冊のうち2冊は実質的にNHK勤務時代に書かれたもので、3冊は結婚して3人のお子さんを生んだ後に、ハーバード大学大学院で脳科学を専攻し学びながら書かれたものです。ご主人が教授だとはいえ、3人の子供を育てながら大学院の勉強(研究というべきでしょうか)を続けて、本まで出版するというのも、また凄いと思います。

著書は、雑誌に掲載されたものが中心ですから、読みやすい短い文章を綴ったものです。最近の2冊には「サイエンスライター」という著者紹介が入っていますが、そういう言い方をするなら、私は「サイエンス・エッセイスト」と呼びたいような気がします。先端の脳科学の話題を扱いながら、雑誌の読者を十分に想定して簡潔で読みやすく分かりやすく、そして読んで得したような気にさせる、実にうまいエッセイなのです。どうして女性にはこうした文章を書くのがうまい人が多いのでしょう。

読みやすい短文集なので、すでに2冊を読み終えました。内容にかかる、脳の話は、別途していきましょう。

新人類の誕生―『トランスポゾン世代』は何を考えているか」1985年
サイエンスとアートの間に―フラクタル美学の誕生」(「中央公論」等掲載)1986年

カラフルライフ―遅咲きのすすめ」(雑誌「ミセス」連載)1995年

やわらかな脳のつくり方」(「SINRA」連載)1999年
危険な脳はこうして作られる」(「SINRA」連載および「考える人」掲載)2005年

<蛇足>
2006年11月に、利根川進教授は、MITの学習と記憶ピカウアセンター所長を辞任することを発表されたようです。新進気鋭の女性神経科学者がMITに就職するのを圧力メールを送って阻止しようとしたという同僚教授の訴えが発端となったようで、MITとしてはノーベル賞学者を処罰しないで、自ら辞職するという形を促したのかもしれません。これは報道されていることであって、勿論、真相は分かりません。

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サイエンスとアートの間に―フラクタル美学の誕生
  • ロドリゲスインテリーン
  • 2009/11/29 10:31 PM

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