アメリカの産業構造(その2)

 アメリカの産業構造は著しく脱産業化(脱モノ作り化)が進展しています。前回に続いて、今回はアメリカの製造業についてより詳しく見て行きたいと思います。

下の図は、前回円グラフで表示した2005年暦年ベースの名目GDPに対する産業別付加価値(Value Added by Industry)の構成を積上げグラフに描きなおしたものです。赤い線で囲った部分がモノ作り産業に相当し、青い線で囲った部分がサービス産業に相当し、その間が流通産業に相当します。(数字は2005年暦年の名目GDP付加価値額 単位:10億ドル)
VA1

モノ作り産業全体としてすでにGDP貢献シェアは小さく、その主力をなす製造業(Manufacturing)は名目GDP全体の12.1%(1兆5,125億ドル)しか占めていません。それでも、製造業は経済の核となる産業と考えられてきましたから、その中身を更にもう少し詳しく見てみることにします。

次の図は、上の全体構造から製造業(Manufacturing)部分だけを取り出して拡大したものです。(数字は2005年暦年の名目GDP付加価値額 単位:10億ドル)
USVA2

耐久財(Durable goods)は名目GDP全体の6.9%(8,543億ドル)、非耐久財(Nondurable goods)は同5.3%(6,582億ドル)を占めます。最も目を引くのは、自動車関連産業(Motor vehicles, bodies and trailers, and parts)が名目GDP全体の0.8%(954億ドル)しか占めていないことです。最大の耐久財産業はコンピュータと電子機器(Computer and electronic products)で名目GDP全体の1.1%(1,353億ドル)を占め、また最大の非耐久財産業は化学製品(Chemical products)で名目GDP全体の1.7%(2,092億ドル)を占めています。プラスティックやゴムは別計上されていますから、この化学製品の主体は薬品等と推定されます。製造業全体が縮小する中でドメスティック産業である食品・飲料・タバコ(Food and beverage and tobacco products)が名目GDP全体の1.4%(1,757億ドル)を占め、かなり高いシェアを有することも目を引きます。

次の図は、これらの主な製造業がこれまでどのような成長経過をたどってきたかを見るグラフです。1977年を100とした指数で2005年までの28年間の成長傾向を表示しています。
USVA3

概ね名目GDP成長に沿った成長を一貫して続けてきているのは化学製品(Chemical products)だけです。これは、プラスチックや合成ゴムなどの安価な石油化学製品等ではなく、知識・技術集約度が著しく高く商品価格も著しく高い、化学薬品等が主体になっているものと推定されます。

コンピュータと電子機器(Computer and electronic products)はいわゆる2000年(Y2K)問題対策投資で2000年までは名目GDPを上回る高い成長を実現していましたが2000年以後は逆に大きく反落縮小し、長年の縮小を経た後に、2003年になってようやく成長拡大傾向に戻りました。しかし、2005年までの28年間の累計でも名目GDPを下回る成長にとどまっていることが特筆されます。情報化は「米国内の」情報機器製造にはあまり恩恵をもたらしてきていないことは明白です。

自動車以外の輸送機器(Other transportation equipment)の太宗は航空機と考えられますが、同様に、1991年をピークに大きく反落縮小し、近年ようやく1991年の水準に戻りつつある状況にあります。2005年までの28年間の累計ではやはり名目GDPをかなり大きく下回る成長にとどまっています。

機械(Machinery)および自動車関連産業(Motor vehicles, bodies and trailers, and parts)は、製造業の中でもとくに成長の停滞が著しく、1977年から2005年までの28年間の累計でやはり名目GDPをかなり大きく下回る成長にとどまっています。とくに自動車関連産業は2004年2005年と最近の2年間は連続して縮小が続いており、国内生産比率の低下と利益率低下の影響がかなり大きいことがうかがわれます。

以上見てきたように主要製造業の成長停滞あるいは縮小衰退が続いているにも関わらずアメリカの名目GDPの安定的な拡大が続いているのは、製造業はもはやアメリカ経済にとってあまり重要性が高くなくなっている逆説的な証拠ともいえます。貿易問題が政治問題になったのは、アメリカ国内においてそれらの産業の地位が凋落し弱くなりつつあったからだといえます。しかし、アメリカの製造業の衰退縮小期はもう概ね終わりにさしかかっていて、1980年代後半以降のアメリカの重点は、情報技術・金融技術およびそれと関連する知的所有権保護・金融証券市場自由化などにもっぱら置かれてきました。

次回は、このようなアメリカの産業構造の主体をなすサービス産業の中味をより詳しく見ていくことにしたいと思います。

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