アメリカの産業構造(その4)

 前回は、サービス産業のうちの情報技術(IT:Information Technology)と金融技術(FT:Financial Technology)領域の産業の中味を見ました。今回は、それ以外のサービス産業の中味を見て行きます。この領域は、専門的および事業向けサービス(Professional and business services)、教育・医療・社会援助(Educational services, health care, and social assistance )、教養・娯楽・宿泊・外食(Arts, entertainment, recreation, accommodation, and food services)、およびその他(Other services, except government)の4つのサービス産業領域に大別されています。

下の図は、全体構造からこれらの4つの領域を取り出して拡大したものです。(数字は2005年暦年の名目GDP付加価値額 単位:10億ドル)
サービス産業2

ここでも個別の産業の規模を認識・理解するために、自動車関連産業(Motor vehicles, bodies and trailers, and parts)と比較しながら見て行くことにします。2005年暦年の自動車関連産業(Motor vehicles, bodies and trailers, and parts)の名目付加価値規模は954億ドルで名目GDP全体に占める割合は0.8%でした。

専門的および事業向けサービス(Professional and business services)は、概ね日本の統計の法人向けサービスに相当し、ビジネスのやり方が、いわゆる「モジュール化」され、外部資源(アウトソース)活用による効率化方向に進展してきていることに対応していると思われます。この領域全体では、1兆4,588億ドル・名目GDP全体の11.7%を占め、ほぼ製造業全体に近い規模があります。

知識・資格等の専門領域分野(Professional, scientific, and technical services)は沢山ありますが、法律サービス(Legal services)とコンピュータシステム設計(Computer systems design and related services)の二つが統計的にとくに区分抽出されています。法律サービス(Legal services)は1,809億ドル(自動車産業の1.9倍)、コンピュータシステム設計(Computer systems design and related services)は1,408億ドル(自動車産業の1.5倍)の規模があります。この二つ以外の、種々の専門的・科学的・技術的サービス(Miscellaneous professional, scientific, and technical services)は5,425億ドル(自動車産業の5.7倍)というきわめて大きな産業規模にあります。

会社企業経営(Management of companies and enterprises)が中分類の統計的独立項目になっています。経営者は、弁護士や会計士やシステムエンジニア等と同様に、専門職種の個人事業者という整理に立っているものと思われます。会社企業経営「産業」は、(就業者数は極めて少ないはずですが)実に2,258億ドル(自動車産業の2.4倍)という巨大規模産業となっています。

事務管理サポート(Administrative and support services)と廃棄物処理修復(Waste management and remediation services)は、狭義のアウトソーシング引き受け産業と理解されます。事務管理サポート(Administrative and support services)は3,366億ドル(自動車産業の3.5倍)、廃棄物処理修復(Waste management and remediation services)は323億ドル(自動車産業の34%)の産業規模があります。

次の大分類領域である、教育・保険・福祉支援(Educational services, health care, and social assistance)は、9,753億ドル・名目GDP全体の7.8%を占めます。内訳は、教育サービス(Educational services)が1,158億ドル(自動車産業の1.2倍)、訪問ヘルスケア(Ambulatory health care services)が4,419億ドル(自動車産業の4.6倍)、病院・看護・介護施設(Hospitals and nursing and residential care facilities)が3,422億ドル(自動車産業の3.6倍)、社会援助(Social assistance)が754億ドル(自動車産業の79%)という規模にあります。

サービス産業大区分の最後は、教養・娯楽・レクリエーション・宿泊・外食等(Arts, entertainment, recreation, accommodation, and food services )です。内訳は、演劇・プロスポーツ・博物館等(Performing arts, spectator sports, museums, and related activities)が540億ドル(自動車産業の57%)、遊園地・賭博・レクリエーション(Amusements, gambling, and recreation industries)が601億ドル(自動車産業の63%)、宿泊(Accommodation)が1,046億ドル(自動車産業の1.1倍)、外食・飲食(Food services and drinking places)が2,259億ドル(自動車産業の2.4倍)です。

以上のどれにも属さないその他の非政府サービス(Other services, except government)が、2,828億ドル(自動車産業の3.0倍)です。

前回と同様、以上で見てきたサービス産業がどのような成長過程を辿ってきたのか、ということを見たものが次の図です。1977年を100とした指数で2005年までの28年間の成長傾向を表示しています。

ここでも特筆すべきことは、この28年の間に名目GDPが6.27倍(指数627)に拡大しているのに対して、ここで説明した全てのサービス産業が例外なくそれを上回る成長拡大を実現してきていて、この間の名目GDP全体の拡大に貢献してきたということです。

コンピュータシステム設計(Computer systems design and related services)は28年間で28倍(指数2761)に拡大成長し、事務管理サポート(Administrative and support services)は同じく16倍(指数1603)に拡大成長しており、やはり情報処理関連専門サービスの拡大が一番大きくなっています。しかし、総じて、情報技術・金融技術関連サービス産業に較べると成長拡大ピッチは緩やかで長期的なものです。

このサービス産業分野領域は、むしろ具体的な専門家すなわち人物イメージに直結します。弁護士・会計士・システムエンジニア・経営者・医者・看護師・プロスポーツ選手・俳優・歌手などなどです。専門的な知識や能力を持った人たちが沢山いて高い収入を得ていることを統計的にも反映していると思われます。

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  • 2007/06/24 5:56 AM

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