2011年8月6・7日「スマートグリッド」に関する連続ツイート

先日の原発問題に関する連続ツイートに続いて、「スマートグリッド」 (電気新聞ブックス―エネルギー新書) 横山明彦著 http://t.co/D8hzmsZ を読み終えて、スマートグリッドに関する連続ツイートをしてしまいました。しかし、こちらは技術的要素の一般理解を広めるために書かれた教養書であり、素人の思い付き的なツイートには馴染まないテーマです。それで、あらためてこの本を読んだ今の時点のわたしの理解を整理してブログにアップしておくことにしました。

********************************************

<電力系統(グリッド)の基礎的な理解と課題認識の整理メモ>

発電機は、一定の周波数(電圧プラスとマイナスの振幅回数)の低電圧の電流を生み出す。その生み出された電流を効率よく搬送するために一旦高電圧に変換し、末端電力需要家に供給するときに再び低電圧に変換する。電力を使う機器は一定の電圧を前提に作られているので、供給電圧は一定に維持される必要がある。そこでもし、電力消費量と発電量にギャップが生じると、供給と消費の電流にギャップが生じ、それが周波数の変動を引き起こす。電力を消費する側の機器はインバーターなどによって周波数変動の影響を回避できるものが増えているが、発電機の側は周波数の変動によって障害が生じる可能性がある。したがって、周波数が一定以上大きく変動した場合には、発電機を守るために電力系統から発電機が切り離される。発電機が電力系統から切り離されると、電力需給のギャップは更に拡大し、それによって周波数の変動が更に拡大するという悪循環連鎖に陥って、終には大停電に拡大していく。したがって、発電量は電力消費量にほとんど過不足なく調整され続けている必要がある。

しかしながら、電力消費量は、季節・時間帯・天候などによってきわめて大きく変動する。したがって、発電量もそれに合わせて柔軟かつ迅速に調整が行える体制が確保されている必要がある。しかし、風力・太陽光・太陽熱・波力などの自然エネルギー発電のほとんどは発電量の変動が激しくて安定せず、また発電所の数が多くなればなるほど全体の発電量の柔軟かつ迅速な発電総量調整は複雑になっていく。したがって、発電能力全体に占める自然エネルギー発電や小規模分散発電の割合は、できるだけ小さくとどめておく必要があると認識されている。これが、電力系統(グリッド)の基本的な理解である。

とくに日本は、経済社会が成熟期に入り、人口が減少に転じ、製造業が縮退を続け、省電力技術が進歩普及し続けているので、電力需要は縮小していく。したがって、日本の発電能力には余剰が生じていくので、むしろ縮小させていく必要があって、自然エネルギー発電や小規模分散発電の増加は、電力供給の面からは必ずしも望ましいものではない。とくに、最終需要家である個人住宅の小規模分散発電は、これまで一方向だけであった電流の流れを双方向化させるので、問題を著しく複雑化させる。これを「逆潮流」問題と呼ぶ。電力系統を安定的に運用する上で、逆潮流は最も避けたい問題である。日本の電力供給は、これまで政府の統制のもとで独占企業によって担われているので、必然的に、自然エネルギー発電や小規模分散発電の拡大には消極的である。二酸化炭素排出量削減という政策目的ために、政府の統制によってやむをえず対応を図るが、その目的だけであるなら、原子力発電の割合を増やしていくことが最も良い対策であると主張されてきた。

そのような中で、2011年3月11日に福島第一原子力発電所のメルトダウンとその後の水素爆発が発生し、それによって、突然、原子力発電所の停止が議論されるようになり、また電力供給不足と大停電発生の危険性がにわかに現実化する事態が生じた。

需要者側の省電力対応と、古い発電所の稼働率アップや新しいガス火力発電所の建設などによって、当面はなんとか大停電の発生を回避していける可能性はあるが、原子力発電所を全部停止することになると、さすがに、電力供給の余力が著しく小さくなって危険な綱渡りと我慢を続けなければならなくなる可能性がきわめて高い。やはりそれは、なんとかして回避していく必要がある。電力需要が小さくなっていく可能性が高い日本では、原子力発電所停止対策として主張されているように、おそらく、ガス火力発電や自然エネルギー発電や省電力化などによって、電力供給能力不足問題はそれほど致命的にはならない可能性はある。しかし、課題は、自然エネルギー発電や小規模分散発電の拡大と電力消費のミスマッチをどのように回避して行けるかということであろう。それがうまくいかなければ、ピーク発電能力を増加させても大停電の危険性を回避することはできず、経済活動や社会活動は大きなリスクを抱え続けることになる。

たとえば、総電力消費予測ピーク時間内にその直前の時間内に使用していた電力量を超える電力使用を行う場合、限界的な使用増加電力に対して著しく高い電力料金を適用することとし、その料金適用情報をあらかじめ30分前までに需要家の機器に通知することとする。需要家側の機器は、それに対応した消費電力制限(キャップ)措置をあらかじめ設定しておいたプログラムに従って実行し、それを超える瞬間電流を自主的に制約する措置を行う。自主制限を行わない需要家は、超過使用電力に著しい懲罰的料金を課されるとすれば、それを回避するための設備投資を選択していくであろう。それによって、総電力消費量のピークは抑制されていき、また限界的に著しく高い料金を支払えば電力使用を制約されないという選択も可能となる。

反対に、最低維持発電能力を総需要が下回る時間内は、その直前の時間内に使用していた電力量を超える電力使用を行う場合、限界的な使用増加電力に対して著しく安いか場合によってはマイナスの電力料金を適用することとし、その料金適用情報をあらかじめ30分前までに需要家の機器に通知することとする。需要家側の機器は、それに対応した消費電力底上げ(フロア)措置をあらかじめ設定しておいたプログラムに従って実行し、それを超える瞬間電流を自主的に活用する措置を実行する。たとえば、蓄電したり湯沸ししたりすることで、電力やエネルギーコストを削減できる。十分に料金が低ければ、そのための設備投資が促進される。

他方、発電側に対する支払い電力料金は、設備投資や運営維持費の間接固定料金と燃料などの直接変動料金に分けて支払う。先ず、総電力消費予測ピーク時間内に提供できる最大発電量を確保するための固定料金設定を行って、新たな発電所建設を促進する。既に償却が進んでいる既存の発電所の固定料金は償却分をディスカウントして、過大な利得が生じないようにする。実際の電力供給は、需要量と均衡するように送電側がコントロールする。発電能力調整所要時間に合わせて、供給量要求はあらかじめ発電側に通知する。要求供給量に対して発電所はあらかじめ可能供給量情報を返す。このような仕組みに従ってオペレーション可能な発電能力に対しては、どのような小規模な発電所に対しても買電を行う。ただし、自ら通知した可能供給量を下回った場合には、著しく高い違約金を支払う契約とする。限界送電料金が著しく高いと、最低維持発電能力を総需要が下回る時間内は蓄電してピーク時間帯に送電することもコスト的に見合う可能性がある。

このようなフレームワークを土台として、電力系統(グリッド)の運用基準を明確にすることが、将来の電力需給安定化に最も必要なことではないかと考えられる。また、そのような運用を実現するための技術的要素として「スマートグリッド」の実現が不可欠である。


Livedoor BLOGOS 掲載記事一覧

無題.jpg

Twitter

selected entries

categories

recent comment

  • PLCと分電盤
    通りすがり
  • 米国のインバウンド・アウトバウンドから日本の状況を考えてみる
    3rdworldman
  • 米国のインバウンド・アウトバウンドから日本の状況を考えてみる
    3rdworldman
  • 米国のインバウンド・アウトバウンドから日本の状況を考えてみる
    寺前秀一
  • 日本に住む外国人の数と中味の変化を見てみる
    TPPsan
  • LNGと原油の月次輸入通関実績推移
    yyy
  • 訪日旅行者数(インバウンド)目標2000万人について考えてみる
    一般社団法人国際観光政策研究所
  • 健康寿命世界一
    3rdworldman
  • 健康寿命世界一
    丸山寛之
  • 大きく転換した米国の国際収支
    3rdworldman

recent trackback

profile

書いた記事数:190 最後に更新した日:2017/01/16

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM