アメリカのGDP構造

 このところの市場相場の乱高下に対して、アメリカの景気の強さにかかるセンチメント(市場心理)の微妙な変化から売られたのだろうとする論評が多いようです。アメリカも四半期GDPを発表しており、そこからアメリカの国内景気の強さとそれに沿って市場動向を読むような話は山ほど出てきます。勿論、変化を読むわけですから、構成項目の変化率の話が軸になり、したがって変化の大きい項目の話が中心になります。しかし、どの国でも経済全体の長期的で本質的な変化は緩やかにおき、数年規模では大きく構造が変わるような変化もあります。四半期で追いかけ変化の大きい項目の動きに一喜一憂しているだけだと、本質的で構造的な変化を見落としてしまう危険性があります。

具体的には、個人耐久消費財消費や民間国内投資などは、強気の所得増加見通しがあれば増加し、弱気の見通しであれば減少するので、その増減は他の項目よりも景気感応的です。ですから自動車販売台数とか住宅着工戸数とかが景気指標として注目されます。しかし、実は、それらがアメリカの国内総生産に占めるウエイトは非常に小さいのです。むしろ非常に小さいので感応的に大きく変動するともいえます。重要なことは、そもそも工業製品や建築物などの物的実体のある財貨は、全部合わせてもアメリカ経済全体に占めるウエイトはあまり大きくないのです。すなわち、アメリカ経済は、著しくサービス化あるいはソフト化が進展しており、したがってアメリカ経済の潜在的成長力を考えるためには、まずそうした構造をきちんと理解しておく必要があります。

そこで、そうした観点から、アメリカの2006年暦年名目国内総生産(GDP)(速報)の構造を分かりやすくグラフ化してみました。

USAの名目GDP構成


まず、グラフの補足説明をします。これは、名目国内総生産の支出(需要)サイドの構成内訳を示したものです。アメリカは日本と異なり、純輸出マイナス、すなわち輸入超過になっていますから、アメリカの国内総支出(需要)は、名目国内総生産と純輸入を合計したものになります。それがいちばん外側のドーナツで示してあります。2006年暦年の名目国内総生産(速報)は13兆2,539億ドルで、純輸出のマイナス(純輸入)はその5.7%に相当する7,618億ドルでした。これは1ドル120円で換算すると91兆4,160億円という巨額なものです。

細かい部分ですが、民間国内投資のうち固定資産投資以外の(グラフ上ではきわめて僅かな)部分は、民間在庫投資です。2006年は在庫が534億ドル(GDPの0.4%)増加したので、ここにかすかに出現しているわけです。在庫増減が全体に占める率はきわめて僅かですが、目先の景気動向を占うには重要な指標としてよく注目されます。

アメリカは純輸出がマイナスで、国内で生産したものより多くを消費もしは投資しています。これは、成長に必要な国内投資資金を国内貯蓄で賄えない「発展途上国型」の構造に似ているように見えます。発展途上にあるかどうかに関わらず、こういう貿易赤字国は、不足部分に対する国外からの投資によって国際収支が均衡しなければ経済の成長を続けることはできません。

アメリカは、長年にわたって恒常的に純輸出マイナス(純輸入)状態を続けています。そのため、アメリカの大幅輸入超過国(日本・韓国・台湾・中国など)に対して、概ね周期的に、政治的な貿易不均衡是正要求を行い、その効果が上がらなければそれらの国々の通貨に対してドルを切り下げるような調整を行って、実質的な対外債務圧縮を実現することを繰り返しています。こういうとアメリカは横暴で悪質なようにも聞こえますが、逆に、輸出超過国はアメリカに対する輸出価格競争力が弱まらないよう輸出超過でも自国通貨をドルに対して安いままに維持しようとする傾向があります。そして、大抵は結果的に矛盾のストレスが溜まることによって、為替レート引上げによる調整を余儀なくされることになります。輸出国側の自国通貨ベースでみれば、一旦は高く売っておいて後で一括値引きに応じているのと似たようにも見えます。ただ、輸出超過国全体としてみればそうですが、その国内では、高く売ったのと後で一括値引きするのは経済主体が違うところが問題です。

いずれにせよ、アメリカは資金制約なく経済成長を続けられる(おそらく世界で唯一の)国なのです。それが、アメリカの絶対的な強みです。

話が少し逸れましたので、本題に戻ってアメリカの国内総生産の支出(需要)サイドの内訳構成を詳しく見ていきたいと思いますが、それはかなり長くならざるをえないと思われるので、次以降にあらためて行うことにします。


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