人口問題

 日本の人口問題は「少子高齢化と人口減少」です。このブログでは社会問題にかかる薀蓄や論評は控えたいと思っていますが、人口問題は、年金問題や団塊の世代の大量退職問題(いわゆる2007年問題)にも関連があり、個人的にも重要な問題になるので、少し考えてみたいと思います。

人口の変化は、個々の人間の多様な生き方の結果として出現します。したがって、他の社会的現象と同様に、普遍的な「法則」はありえません。しかし、過去の人口変動を分析すると、何らかの「傾向」を見出すことはできます。



移民や流入等による社会的な増減を除外すれば」、(自然)人口とその構成は、当然、生まれる数と死ぬ数の変化によって変動します。実績的に見て、「子供の生まれる数は子供の死ぬ数に連動して変化する傾向」があり、「(戦争や疫病や飢饉あるいは逆に医療の発達などによって子供も大人も)死ぬ数が劇的に変化する場合は多々あるが子供の生まれる数の変化は『それに比較するとそれほど劇的には』起こらない」ということがいえるのではないかと思われます。

子供と大人の死ぬ数が多く平均寿命が短かったときには子供が沢山産まれ、すなわち「多産多死」で、ストックとしての人口はあまり増えないような均衡的状態がずっと長く続きました。しかし、食糧事情や医療環境の改善によって死ぬ数が劇的に減少し平均寿命が延び始めると、「少産少死」傾向に転換し、平均寿命が限界的なところまで延びるまでの間は、死ぬ数の減少が生まれる数の減少を上回る状態が続いて、人口は急増を続けました。しかし、平均寿命が80歳を超えて延びが鈍化し限界点に近づくと、生まれる数の減少が死ぬ数の減少を上回るようになって、人口は減少に転じます。これが、概ねのダイナミックな人口変動の傾向であると考えられます。

以上は、総人口の増加と減少について述べたものですが、高齢化はその年齢別構成問題になります。人口の年齢別構成は「人口ピラミッド」によって現されます。

「多産多死」で均衡的状態が続いているときは、「人口ピラミッド」は、まさに三角形の「ピラミッド型」になっています。それが、「少産少死」に「人口転換」すると、少死による生産年齢人口の増加(中間から上への漸次の膨張)が少産による子供の減少(底辺部分の漸次の縮小)を上回って、ピラミッド全体が大きくなりながら(すなわち人口が増加しながら)徐々に「釣鐘型」に変わっていきます。そして、少死による人口増加(上の部分の膨張)が一番上の高齢者にまで及び、90歳・100歳という平均寿命限界(上への延びの限界)に近づいてくると、「釣鐘」は徐々に下すぼみの「逆三角形型」に変化しながら、全体として小さくなり始めます(すなわち人口減少に転じます)。

1950
2005
2050
<出所:国立社会保障・人口問題研究所「人口ピラミッドの推移(1930−2055)」>


日本は、過去200年以内の期間に、「人口転換」による人口の爆発的増加を経験し、更にすでに人口減少に転じているわけです。上記の人口ピラミッドのように、人口減少に至る場合は、同時に必然的に少子高齢化の逆ピラミッド構造になります。日本の場合は、この理論的傾向に加えて、戦争中の少産とその反動の戦後の出産ブームの大きな波があり、社会問題を更に増幅している側面があります。

人口ピラミッド
<出所:社会実情データ図録「各歳表示の人口ピラミッド」>


しかし、日本国内から目を転じて世界に目を向けると、世界全体としては依然として人口の爆発的増加が続いています。世界人口は、増加ピッチが緩やかになりつつある兆候は伺えるものの、なお1年間に概ね日本の生産年齢人口に匹敵する87百万人程度も増加しています。そして、人口が爆発的に増加している国や地域と減少に転じようとしている国や地域が存在しています。そこで、増加している国や地域から減少しようとしている国や地域へ、「移民」による人口移動を行って社会的に調整を図ることが考えられます。


<出所:UNFPA(国連人口基金)「世界人口の推移」>


実際、OECD加盟諸国のような豊かな国で明確な人口減少が出現していないのは、新たな移民の受け入れや、すでに過去受け入れ定住化した移民の子孫の出生率の高さなどによるためであると推定されます。したがって、逆に言えば、日本は、移民受け入れを相対的に制限しているために、人口減少が実現してしまっているともいえます。

日本や韓国以外のOECD諸国のほとんどは、移民を受け入れてきていますが、当然それに伴って問題も抱え込んでいます。移民は、当然、もっぱら人口の爆発する貧しい国と地域から人口が減少しようとする豊かな国に移動します。したがって、異なる国民間の豊かさの格差が、ひとつの国の中の格差として持ち込まれることになります。あるいは、貧しい国の医師や看護師や教師や技術者などの数少ない能力のある人々が豊かな国にどんどん移民してしまい、貧しい国の経済や社会の発展がますます阻害されてしまうという側面もあります。また、貧富の格差だけでなく、民族や宗教や文化や習慣の違いが、様々な場所で新たな衝突を生み出す危険性も増加します。

米国は、違法入国者を含むラテン系移民とその子孫の増加によって、何十年後かに、人口構成面で「ラテン系の国」になる「可能性」が生じています。すでにメジャーリーグベースボール選手の多くはラテン系出身者になっています。「松坂大輔」投手は、日本で生まれて育った日系の日本国籍人ですが、米国に「流出」してボストンで働くことになっています。また、米国プロゴルフツアーのソニーオープン・イン・ハワイで大健闘した身長155cm・16歳の高校生アマチュア「T.フジカワ」は、日系の米国籍人を両親に持つ米国生まれの米国籍人だそうです。ワールドカップサッカーフランス代表チーム主将のジダンは、フランスで生まれたアルジェリア系移民の子で、フランス国籍を持ち、スペインに住んでスペインのチームで働いていました。彼は、フランスの人口統計の中で、アルジェリア系移民として扱われるのでしょうか、民族的区別のない普通のフランス人として扱われるのでしょうか。そして彼の子供はどうなのでしょうか。

このように移民の問題は、きわめて多様な側面を持つため、統計的に実態を把握することがきわめて困難です。国籍で見るのか、出生国で見るのか、民族で見るのか、居住地(現住所)で見るのか、その全ての情報を集めて国際間の移動実態を整理することはほとんど困難ではないかと思われます。

沢山の「但し書き」をつけたOECDの統計によると、90日以上(すなわち長期)滞在する外国籍の人間は、2001年の日本では、1,789千人で人口対比1.4%に過ぎません。ちなみに、ドイツは8.9%の7,319千人、フランスは5.6%の3,263千人(フランスのみ1999年)、イギリスは4.4%の2,587千人です。これは、外国籍長期滞在者の統計で、国籍を取得した移民やその子孫は同国人ですからこれに含まれていません。

日本の外国籍長期滞在者1,789千人の国籍別内訳は、韓国・朝鮮632千人、中国・台湾381千人、ブラジル266千人、フィリピン157千人、ペルー50千人、米国46千人などとなっています。韓国・朝鮮および中国・台湾は終戦時に在留していた人たちの子孫がほとんどで、ブラジル・ペルーは日系移民の子孫がほとんどですから、実質的に最近になって長期滞在を許可された移民はほとんど存在しないと考えるべきでしょう。

さて、日本は、自然人口減少による少子高齢化と総人口の減少をそのまま放置するか、海外から新たな移民を受け入れて総人口減少の緩和を図るか、いずれかの道を選択する必要があるように思われます。どちらを選択するにしても、それぞれに異なる悪い面があり、人々の意見も全く分かれるところです。今のところは、他の先進諸国の悪い面の情報が多く入っているので、排他的ナショナリズムの高揚傾向もあって、移民受け入れに傾いていく可能性はきわめて小さいように思われます。


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